「人手不足のしわよせは利用者へ|介護現場で本当に困るのは誰なのか」

介護の本質

はじめに

介護現場の人手不足では、一体誰が大変だと思いますか?

多くの人は職員や現場の責任者と答えると思います。

しかし、一番しわ寄せがいくのは利用者だということを案外忘れがちです。

今回は、人手不足が利用者にどのような影響を与えるのかを解説していきます。


人手不足は利用者の生活に影響する

人手不足で分かりやすく影響が出るのが身体介助です。

時間に追われながら介護すると以下のようなことが起こります。

・トイレ介助の時間がずれて間に合わず汚染してしまう。

・オムツ交換の間隔が長くなり、皮膚疾患につながる

・水分補給の時間が確保できず、脱水につながる

・口腔ケアがおろそかになり、誤嚥性肺炎につながる

などです。

このように人手不足は単に職員が忙しくなるだけではありません。
利用者の生活の質や健康状態にも影響を与えてしまいます。


自立支援や生活リハビリが後回しになる

人手不足は結果としてADLの低下にもつながります。

本来は洗濯物たたみや、テーブル拭きなど利用者が生活リハビリとして行っています。

しかし、時間に追われると

「職員がやった方が早いから」

と職員が代わりに行うことがあります。

一見すると利用者のために行っているように見えますが、長期的には利用者ができることを奪ってしまう場合があります。

その結果ADLの低下につながってしまいます。

また、ADLの低下は身体介護が増えるため、さらに職員の負担が増すという悪循環につながるケースも少なくありません。


会話やレクリエーションの時間が減る

人手不足で一番に削られる時間は、利用者との会話や余暇活動の時間です。

身体介護は、どんなに工夫をこらしてもサービス内容を削ることが難しいため、どうしても余暇の時間を減らさざるを得ません。

しかし、この時間が削られることで、利用者は日々の楽しみが減り、生活の意欲の減退につながります。

また、刺激が減ることで認知機能が低下する原因にもなります。


 職員の余裕のなさは利用者にも伝わる

実は職員が思っている以上に利用者は職員を見ています。

私の経験上、人手不足で雰囲気が良い現場というのはほとんど見たことがありません。

当然、利用者はこの雰囲気を感じ取っており、多くの場合は

「忙しいのに頼むのは申し訳ない」

と感じています。

私も人手不足の現場にいた頃は、この言葉を何度も聞きました。

その結果

・トイレに行きたいけど声かけづらいので我慢する

・体調が悪いけど言い出せない

・夜間のナースコールを押しにくい

などといったことになりがちです。

そしてこれらのことが、排泄の失敗による尊厳の喪失、体調不良の見逃しなどにつながります。

また、この状況が続くと職員と利用者間の信頼関係を作ることも難しくなり、ニーズの把握もしにくくなります。

そして、ニーズを把握できないので、利用者は本当に必要な援助を受けることが難しくなります。

このように介護現場の雰囲気の悪化は職員のことだけではなく、利用者の心理にも多くの悪い影響を与えてしまうのです。


事故のリスクが増える

現場がバタバタしていると事故のリスクが増えます。

常に時間に追われる中で、安全対策が疎かになるからです。

具体的には

・嚥下状態の良くない利用者の食事介助を急ぎ、誤嚥、窒息のリスク

・移乗介助時に皮膚の保護が疎かになることでの表皮剥離のリスク

・センサーマットのスイッチの入れ忘れ

などがあります。

もちろん職員一人ひとりが安全を意識することは大切です。

しかし、人手不足の状態が続けば続くほど事故のリスクは高まります。

利用者の安全を守るためにも、人員体制や業務内容の見直しが必要だと感じます。


会議や振り返りの時間がなくなる

定期的な会議や一日の振り返りも、人手不足の現場では疎かになりがちです。

その結果、すぐに解決しなければいけない問題についても後回しになってしまいます。

・トイレ誘導が上手くいかず時間の調整が必要

・食事量が減ってきている利用者がいる

・最近、身体に発赤が増えてきた

など日々の変化について、そのまま流れてしまい、利用者への負担につながります。

また、このような状況が続くと職員間の意識も変化してきます。

「その日その日が終わればいい」

と改善意識も働かないため、より良いサービスを提供することが難しくなってきます。

その結果、問題が解決されないまま時間だけが過ぎ、利用者の状態悪化につながることもあります。
このような状況が続くと悪循環に陥ってしまうのです。

日々の現場をまわすことはもちろん大事です。しかし、それと同じくらいに会議や振り返りの時間も確保したスケジュール管理も大切だと感じます。


人手不足だからこそ業務の見直しも必要

ここまでは人手不足による利用者への影響についてふれてきました。

しかし、ある意味この状況は業務の見直しをする良い機会だとも思います。

私もこれまで人手不足の現場に長くいたことがあります。

その際には、スケジュールや利用者対応の見直しをして、結果として無駄を省き、業務の効率化を図れたこともあります。

具体的には

・オムツをより肌に優しい高品質のものに変えた

・業務の動線や物品の置き場を見直し、機能性が向上した。

・シフトの種類を増やして、柔軟に対応できる体制を整えた

などがあります。

もちろん人手不足が長く続くことは望ましくありませんし、肯定するわけでもありません。

職員が常に走り回るほどの人手不足は、早急に人員の確保が必要です。

しかし、人手不足によって最終的に負担を抱えるのはいつも利用者です。

苦しい状況下でも、利用者を守るためにも、人手不足の問題を職員だけの問題として考えてはいけないと感じます。


まとめ

今回は人手不足による利用者への影響を解説してきました。

・生活への影響

・ADLの低下

・認知機能の影響

・心理的な悪影響

・事故リスクの増加

・サービスの質の低下

などたくさんの影響を与えてしまいます。

職員の問題ではなく、組織的な問題として捉えて、改善していくことが大切です。

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