はじめに
「働きやすい職場」と聞くと、何を思い浮かべるでしょうか。
給料が高いこと、休みが取りやすいこと、人間関係が良いことなど、人によって思い浮かべるものは違います。
介護職として長く働いてきた私自身も、働きやすさは単純に決められるものではないと感じています。
今回は介護職員の働きやすさについて考察していきます。
給料や休みだけでは決まらない
働きやすさを語るうえで、待遇面も大きな要因の一つです。
待遇面には、例えば次のようなものがあります。
- 給料
- 賞与
- 福利厚生
- 休日・希望休の取りやすさ
- 残業の多さ
介護の仕事は決して楽な仕事ではありません。
だからこそ、仕事に見合った給料や賞与があること、休みをしっかり取れること、残業が少ないことなどは、働き続けるうえで重要なポイントになります。
ただし、「給料が高い=働きやすい職場」とは限りません。
給料が高くても、残業が多かったり、休みが取りにくかったり、人間関係に問題があったりすれば、働きやすいとは感じにくいでしょう。
一方で、多少給料が低くても、人間関係が良かったり、休みが取りやすかったりすることで、「この職場は働きやすい」と感じる人もいます。
つまり、待遇の何を重視するかは、人によって違います。
働く側から考えると
職場を選ぶときには、単純に給料の金額だけを見るのではなく、
「自分は何を重視して働きたいのか」
を考えることが大切です。
給料を重視する人もいれば、休みや残業の少なさを重視する人もいるでしょう。
家族との時間を大切にしたい人にとっては、給与が多少高いことよりも、希望休が取りやすいことのほうが働きやすさにつながるかもしれません。
事業所側から考えると
事業所側にも、職員が働きやすい環境を整える役割があります。
もちろん、すべての希望を叶えることは難しいでしょう。
特に休日については、「休みが取りやすい=いつでも希望通りに休める」ということではありません。
介護施設はシフト制で運営されています。
利用者の生活を支えるためには、必要な時間帯に一定の職員を配置する必要があります。
そのため、すべての職員の希望休を毎回そのまま通してしまえば、施設の勤務体制そのものが成り立たなくなってしまいます。
だからこそ大切なのは、「できるだけ休みを取りやすくすること」と「施設を運営するために必要な勤務体制」のバランスです。
例えば、希望休を出しやすい仕組みを作るだけでなく、職員同士で調整しやすくしたり、勤務表を作る側ができる限り希望を反映したりする。
こうした積み重ねによって、職員にとって「休みを相談しやすい職場」につながっていきます。
待遇についても同じです。
限られた人件費の中で給与を大幅に上げることが難しい事業所もあるでしょう。
その場合でも、福利厚生を充実させたり、残業が発生しないシステム作りなど、職員が安心して働き続けられる環境を考えることはできます。
待遇の良さは、単純に給料の金額だけで決まるものではありません。
「自分にとって、安心して働き続けられる条件が整っているか」
そして事業所側からすれば、
「職員が安心して働き続けられる環境を、どこまで整えられているか」
という視点で考えることが大切なのではないでしょうか。
人間関係の良さとは?
働きやすさを考えるとき、多くの人が気にするのが「人間関係」ではないでしょうか。
上司や同僚との関係が悪かったり、職員同士で常に気を遣わなければならなかったりする職場では、仕事そのものよりも人間関係に疲れてしまうことがあります。
一方で、働きやすい職場というと、
「職員みんなが仲良くしている」
というイメージを持つかもしれません。
しかし、私は必ずしもそうではないと思っています。
風通しの良さが大切
働きやすい職場では、上司と部下の間でも、必要なことを相談しやすい環境があります。
困ったことがあったときに相談できる。
自分の意見を伝えられる。
分からないことを質問できる。
そして、立場に関係なく必要なことを話し合える。
こうした「風通しの良さ」は、人間関係を考えるうえで大切な要素です。
もちろん、上司と部下が何でも友達のように話せばいいということではありません。
それぞれの立場を尊重しながら、必要なことをきちんと話せる。
そのような関係が、働きやすさにつながるのではないでしょうか。
適切な指導をしてくれるか?
また、「人間関係が良い職場」を考えるときに注意したいことがあります。
それは、
「職員に何も言わないこと=人間関係が良い」ではない
ということです。
介護の仕事では、利用者の安全やケアの質に関わることについて、必要な指導や注意を受けることがあります。
ミスをしたときに、何でも許してもらえる職場が働きやすいとは限りません。
大切なのは、必要なことはきちんと指導する一方で、ミスを必要以上に責め続けないことではないでしょうか。
「何が問題だったのか」
「次はどうすれば防げるのか」
を一緒に考えられる。
そんな雰囲気があれば、職員も失敗を隠すのではなく、相談しやすくなります。
介護のミスについてはこちらの記事で解説しています。
→介護現場のミスは責めるだけでは減らない|事故を防ぐための考え方
全員と仲良くする必要はない
職場の人間関係について、もう一つ大切なのが、
職場の人とは、ある程度割り切って付き合うことも必要
ということです。
職員も一人ひとり性格が違います。
気の合う人もいれば、どうしても考え方が合わない人もいるでしょう。
だからといって、全員と仲良くする必要はありません。
仕事をするうえで必要なコミュニケーションが取れ、お互いに協力できるのであれば、それだけでも十分な場合があります。
むしろ、職員同士の距離が近すぎることを負担に感じる人もいます。
仕事が終わってからも頻繁に付き合うことを求められたり、職場で常に一緒に行動することを求められたりすると、それを苦痛に感じる人もいるでしょう。
つまり、
「仲が良い職場=全員が働きやすい職場」
とは限りません。
働く側から考えると
職場を選ぶ側としては、
「自分はどのような人間関係なら働きやすいのか」
を考えてみることも大切です。
職員同士で和気あいあいと働きたい人もいれば、仕事とプライベートを分けて、必要なときに協力し合うくらいの距離感を好む人もいます。
自分にとって心地よい距離感を考えておくことは、職場選びの一つの基準になるでしょう。
事業所側から考えると
一方で、事業所側には、職員同士が適切な距離感を保ちながら働ける環境をつくることが求められます。
- パワーハラスメントを放置しない。
- 上司や部下が相談しやすい環境をつくる。
- 必要な指導は適切に行う。
- ミスを必要以上に責める雰囲気をつくらない。
そして、職員同士の関係が悪化しているときには、問題を放置せずに必要な対応をする。「職員同士で仲良くしてください」と言うだけでは、人間関係の問題は解決しません。
仲良くさせるのではなく、安心して仕事ができる関係をつくる。
これも、事業所が考える「働きやすさ」の一つなのではないでしょうか。
介護職の人間関係についてはこちらの記事でも解説しています。
→介護職の人間関係がつらい理由|現役介護士が実践する対処法
適材適所も働きやすさにつながる
得意・不得意を理解する
介護職にも、それぞれ得意なことや苦手なことがあります。
例えば、
- 利用者とのコミュニケーションが得意
- 身体介護が得意
- 認知症ケアが得意
- 記録や事務作業が得意
- 新人を教えるのが得意
- リーダーとして職員をまとめるのが得意
など、人によって持っている能力はさまざまです。
もちろん、介護職である以上、基本的な業務を一通りできることは大切です。
しかし、すべての職員が同じ能力を持っているわけではありません。
だからこそ、「適材適所」も働きやすさを考えるうえで大切な要素だと思います。
働く側から考えると
自分の得意なことを活かせる仕事であれば、仕事にやりがいを感じやすくなるでしょう。
反対に、苦手なことばかりを任され続けると、自信を失ったり、仕事そのものがつらくなったりすることもあります。
もちろん、苦手だからといって避け続ければいいわけではありません。
苦手なことを経験することで成長できる場合もあります。
私自身も元々、利用者と上手くコミュニケーションが取れていたわけではありません。
どのような声掛けが良いのか、声のトーンはどうか、その人の喜ぶ話題は何かなど考えて、行動した結果、成長できた部分もあります。
大切なのは、得意、不得意だけでなく、どのように自分が成長していきたいのかを考えることではないでしょうか。
事業所側から考えると
事業所にとっても、職員の適性を把握して配置することは大切です。
人手が足りないからといって、単純に空いている場所へ職員を配置するだけでは、その人の能力を十分に活かせないことがあります。
もちろん、介護現場では人員配置の都合があり、すべてを職員の希望どおりにすることはできません。
それでも、
「この職員は利用者との関係づくりが得意だな」
「この人は新人に教えるのが上手だな」
「記録や書類の整理を任せると力を発揮するな」
といった、それぞれの特徴を日頃から見ておくことはできます。
私の経験談になりますが、まだ大きな役割を持っていなかった職員に、レク活動の係を担当してもらいました。
その結果、水を得た魚のように、利用者の喜ぶ企画を考えたり、施設内の装飾に手を加えてくれたりと活躍する場面が増えました。
そのことが、その職員自身も自信がつき、その後の成長にもつながりました。
このように、個人の能力を活かせる役割を考えていく。
それは職員本人にとってだけでなく、チーム全体にとってもプラスになる可能性があります。
「人を活かす」考え方
介護現場では、どうしても「何人配置するか」という人員の数に目が向きます。
もちろん、必要な人員を確保することは重要です。
しかし、職員それぞれの能力や適性を活かせているかで職場の雰囲気や仕事の進み方は変わってくるのではないでしょうか。
私は、
「人を配置する」のではなく、「人を活かす」
という視点こそ大切だと考えています。
職員の得意なことを見つけ、それを活かせる場所や役割を考える。
その積み重ねが、職員の働きやすさだけでなく、チームとしての力を高めることにもつながっていくのだと思います。
介護職の成長についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
→介護職で成長する人の特徴とは?|20年以上現場で見てきた共通点
働きやすさとケアの質のバランス
働きやすいことと楽をすることは違う
職員が安心して働ける環境をつくることは、とても大切です。
しかし、ここで一つ線引きしておきたいことがあります。
それは、
「働きやすいこと」と「楽をすること」は違う
ということです。
介護の仕事には、利用者の生活や安全を支える役割があります。
そのため、職員が楽になることだけを優先して、
「この業務は大変だからやらない」
「職員が忙しくなるから、このケアは省く」
となれば、利用者へのケアが疎かになってしまいます。
それでは、本当の意味で働きやすい職場とは言えないでしょう。
職員が無理せず働ける環境作り
一方で、職員が無理をし続けることも良くありません。
疲労が蓄積し、心に余裕がなくなれば、利用者への声かけが雑になったり、小さな変化に気づきにくくなったりすることもあります。
本来必要のない残業や過度な業務負担を減らすことは、職員を甘やかすことではありません。
むしろ、職員が心身ともに余裕を持って働けることは、利用者へのより良いケアにもつながります。
理想は、
職員が働きやすい
↓
心身に余裕が生まれる
↓
利用者へのケアにも良い影響が出る
という循環です。
働きやすさをケアの質につなげる
介護現場では、
「利用者のために職員が頑張る」か、
「職員が楽に働けるようにする」か、
という二択のように考えてしまうことがあります。
しかし、本来はどちらか一方を選ぶものではないと思います。
職員が無理をしなくても、必要なケアをきちんと提供でき、利用者の生活を守ることができる。
そんな環境を目指すことが、事業所にとって大切なのではないでしょうか。
職員が働きやすいことと、利用者へのケアの質を高めることは、決して対立するものではありません。
その両方を目指すことが、働きやすい職場づくりにつながるのだと思います。
働きやすさは人それぞれ
私自身、長く介護現場で働いてきて感じるのは、「働きやすさは人によって違う」ということです。
例えば、
- 給料が高ければ、多少仕事が大変でも頑張れる人
- 給料が多少低くても、人間関係の良い職場で働きたい人
- 休みの取りやすさを重視する人
- 仕事のやりがいや、成長できる環境を重視する人
- 介護現場のシステムがしっかり機能していることを重視する人
- 接遇について、きちんと教育されている職場を求める人
このように、働きやすさにつながる要素は一つではありません。
また、どれか一つの条件だけではなく、複数の条件がそろって初めて「働きやすい」と感じる人もいるでしょう。
つまり、ある人にとって働きやすい職場が、必ずしも別の人にとって働きやすいとは限りません。
だからこそ、「働きやすい職場とは何か」を考えるときには、職場側の条件だけでなく、自分が何を大切にして働きたいのかを考えることも大切なのだと思います。
働きやすい職場に、誰にでも当てはまる正解はありません。
給料を重視する人もいれば、人間関係を重視する人もいる。
休みを重視する人もいれば、仕事のやりがいや成長を重視する人もいる。
だからこそ、
事業所側には、一人ひとりの職員ができるだけ働きやすいと感じられる環境を追求する姿勢が必要なのではないでしょうか。
働きやすい職場についてのポイントはこちらの記事でも解説しています。
→介護職の転職で失敗しないために|現役介護士が教える職場選びのポイント
私の考える働きやすい職場
私は「働きやすさ」と「ケアの質」を対立させる必要はないと考えています。
職員が無理なく働けることで心身に余裕が生まれ、より良いケアを提供できる。
そして、そのケアが利用者の安心や笑顔につながり、自分たちの働きやすさが利用者に還元されていることを実感できる。
私は、そんな職場こそが、本当の意味で「働きやすい職場」なのだと思います。
まとめ
今回は、介護職にとっての「働きやすさ」について考えてきました。
働きやすさは、給料や休み、人間関係など、一つの条件だけで決まるものではありません。
また、何を働きやすいと感じるかも人によって違います。
今回の記事のポイントをまとめます。
・働きやすさは給料や休みだけでは決まらない
・人間関係は「仲の良さ」だけでなく、相談しやすく安心して働けることが大切
・職員一人ひとりの得意なことを活かす「適材適所」も働きやすさにつながる
・働きやすいことと、楽をすることは違う
・職員が無理なく働ける環境は、ケアの質にもつながる
・働きやすさの感じ方は人それぞれだからこそ、お互いの考え方を理解することが大切
「働きやすい職場」と聞いても、すべての人が同じ職場を思い浮かべるわけではありません。
だからこそ、働く側も事業所側も、
「働きやすさとは何なのか」
を考え続けることが大切なのではないでしょうか。
そして、職員が安心して働ける環境と、利用者により良いケアを提供すること。
この二つをどう両立していくかを考えることが、これからの介護現場にとって大切なのだと思います。


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