はじめに
介護の世界は、一般的に「人手不足」のイメージが強くあります。
しかし、世間一般のイメージと介護現場での「人手不足」とは実は、実態が少し異なります。
この記事では介護現場での「人手不足」の実態について説明していきます。
介護業界で言われる「人手不足」とは何か
介護保険の指定を受けて運営されている事業所は、国が定めた「人員基準」があります。
人手不足というと、この人員基準を満たしていないことだけを指している風に思う人も多いでしょう。
もちろん人員基準を満たしていないということは、人手は当然足りていない状態です。
しかし、必ずしも
「人員基準を満たしている」=「人数が足りている」
とは限りません。
むしろ介護施設では人員基準は満たしていても現場が上手く回らないことも多くあります。
人数がいても人手不足になる理由
人数がいても現場が回らない理由として、職員の経験や習熟度の差があります。
新人職員、特に未経験者も入職したら、この人員基準に含まれてしまいます。
同じ業務を新人が行った場合はどうしてもベテランと比べて、スピード感や安定性が損なわれます。
また、ベテラン職員は指導や確認に時間を取られてしまいます。
このため、新人職員が育つまでは、どうしても現場がうまく回らないことが多いです。
新人職員が早く戦力扱いされる現実
介護現場では新人職員でも比較的早く、独り立ちして現場に入るケースが珍しくありません。
介護経験者は特にその傾向が強くあります。
人手不足が深刻な職場では、一人入職しても新人が育つまでの期間があるため、すぐに人手不足が解消するわけではありません。
そのため、新人職員には一日でも早く独り立ちし、戦力となってもらいたいものです。
しかし、先輩職員も通常業務や担当の仕事があるため、業務を消化することが優先となり、指導が疎かになる場合もあります。
このため、十分に成熟しないまま、介護の現場に入ることも少なくありません。
本来は十分に指導を受け、技術が成熟した上で独り立ちするのが理想的です。
もちろん、事業所によっては、経験の差によって指導期間がしっかり決まっている場合もあります。
しかし、常に人手不足な事業所は上記の様に新人指導がうまくいっていないケースが多いです。
人手不足が生む悪循環
私自身も何度か人手不足の現場に身を置いたことがあります。
介護現場で、人手不足が常態化していると、ある悪循環が生まれてきます。
新人職員への指導が疎かになると、技術が成熟しないまま現場に入ることになります。
その場合はベテラン職員が業務の手直しをしたり、改めて指導し直す手間が発生します。
また、指導の行き届きかなかった新人職員は最低限の業務しか出来ないため、ベテラン職員に業務の負荷が集中します。
そして、負荷の多くなったベテラン職員は限界を迎え、いずれ退職に至ります。
こうして、また人手不足の状況になるという悪循環を私は何度かみてきました。
こういったケースは単に人手が足りないだけではでなく、徐々に全体の介護の質も落ちてくるものです。
こうなると本来の状態に戻るには相当なエネルギーと時間を要することになります。
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本来の介護以外の業務が増える現実
人手不足の影響は介護に関することだけでは済みません。
介護現場では身体介助だけでなく生活援助業務もあります。
特に施設では清掃やごみ回収、シーツ交換なども介護職員が担っていることが多いです。
(施設によっては外部業者が入ることもある)
また、介護現場ではたくさんの書類作成業務もあります。
こういった業務も削減はできないため利用者と向き合う為の時間が削られていきます。
このように利用者への直接的な介護以外にも多くの業務が存在します。
その結果、現場は「回っているように見えているだけ」という状況も生まれます。
「回っている現場」は本当に足りているのか
「現場が回っている」
とはどのような状況のことをいうのでしょうか?
人手不足といわれている介護事業所でも、日々、職員が現場を回しています。
しかし
・職員全員が走り回りながら、やっと必要最低限のケアを提供できる
・通常の介護サービスを余裕をもって提供でき、利用者に向き合う時間を持てる
この二つは全く意味が違ってきます。
特に前者の場合は、経営目線から見た場合は
現場が回っている=人手は足りている
と誤解を招きやすい傾向にあります。
私も責任者時代に人員については、上司と職員の板挟みになり苦労した覚えがあります。
このような、ギリギリで最低限のケアの提供が保たれている状況は、利用者に対しての細かな配慮や、声かけが削られていきます。
人手が増えたら取り戻すべきもの
普通に考えると人手不足が解消されれば以前のサービス水準にすぐ戻せそうに思えます。
しかし私の経験では、実際にはそう上手くいかないケースがありました。
本来であれば、人手が増えたということは、削られていた個別ケアや利用者との会話の時間など増えてくるはずです。
ただ、なぜかそうはならず、これまでの人手不足の状況とサービスの質が変わらない場合があります。
これは、長期間人手不足が続いたことで、職員は「最低限で回すこと」に慣れてしまっていることが原因です。
事前に人手不足の解消を予測して計画していなかったことでこのような状況に陥りやすいと感じます。
この状況を防ぐためには、
(例)あと◯人職員が増えたら
・レク活動を週2回から3回に増やす
・居室の訪室の頻度を増やす
・コップや歯ブラシなど消毒の日を増やす
など事前に計画し職員に周知しておくことで、初めてサービスの質の改善に繋げることができます。
また、職員のモチベーションを保つのにも必要なことだと感じます。
人手不足の本質とは?
介護現場の人手不足とは、単純な人数の問題ではありません。
人手不足になると現場を走り回りながら業務を終えて
「とりあえず今日も終わった」
と疲弊するだけの一日になりがちです。
本来なら、利用者に向き合いながら変化を予測したり、利用者の喜ぶことを考えることが介護士の大切な仕事だと私は考えています。
提供するサービスが削られることは、
「利用者に寄り添う」
この大切なことが損なわれることです。
私は、人手不足とは「人数が足りない状態」ではなく、「利用者に寄り添う余裕が失われた状態」だと考えています。
まとめ
今回は介護現場の人手不足について説明しました。
まとめると以下のとおりです。
・人手不足は職員だけの問題ではない
・最も影響を受けるのは利用者
・「何が削られているのか」を考えることが重要
・人手不足とは「利用者に寄り添うこと」が損なわれること
人手不足の要因は様々です。
しかし、その影響を最も受けているのは職員ではなく利用者です。
だからこそ常に
「どのような介護を提供したいのか」
という視点で人手不足を考える必要があると思います。


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