介護現場のミスは責めるだけでは減らない|事故を防ぐための考え方

介護現場

はじめに

介護職の方でこれまでミスをしたことがない人はいるでしょうか?

いたら素晴らしいことですが、間違いなく、いないと思います。

人は誰でもミスをします。

介護現場においてもそれは例外ではありません。

私自身も仕事でたくさんのミスをしてきました。

そのミスの内容によっては上司や同僚から責められたこともありました。

そして恥ずかしながら、相手のミスに対し責めたこともあります。

しかし、ミスを責めるだけでは根本的には何も解決しませんでした。

今回の記事では私自身の経験を交えて介護現場のミスについての考え方を解説していきます。


ミスは次に起こさないことが大切

まず、一つはっきりしていることはミスを責めることでは、何も改善されないということです。

私の経験談ですが、例えば介護現場で仕事の抜けが起きた場合に、職員の落ち度を指摘したことがあります。

そして、時間が経つと今度は別の職員が同じような抜けが起きてしまいました。

これは、ただ個人を注意すれば、そのあとは同じミスを繰り返さないだろうと考えたからです。

しかし、本来は注意だけではなく、ミスが起きた原因についてもっと考えるべきだったと思います。

ミスが起きる原因は、職員個人のことだけはなく、いくつもの要素が重なって起きることもあります。

職員ではなく原因の追求に力をいれ、再発を防ぐこと。

そのことが利用者が安全に安心して過ごせる環境づくりにつながります。


事故報告書は罰ではない

事故報告書を書く本当の目的

事故報告書を書く一番の目的は

「次に同じような事故を起こさないこと」

です。

介護現場では必ずと言っていいほど事故が起きます。

事業所によって基準は違いますが、事故発生後は事故報告書を書くことがほとんどです。

職員にとっては、この事故報告書を書くことに、大きな不安や恐怖を感じていることがあります。

私自身も新人の頃は

「これは、自分がやったことだからしょうがない」

と、半ば罰を受けているような、始末書の感覚で書いていたこともあります。

しかし、本来は職員にそのような罪悪感を持たせるためのものではありません。

責任者や先輩は事故報告書の本当の目的について、しっかりと伝えることが大事だと思います。

検討会は吊し上げる場ではない

事故後の検討会にも、会の内容や進行には注意が必要です。

検討会はあくまで、事故報告書と同じで、次の事故を起こさない策を考えるための会議です。

事故に関わった職員ははあくまで状況の確認をするために出席しています。

ここで本人を責めてしまうと、かえって萎縮してしまい、次のミスを引き起こす原因にもなります。

また、そのような雰囲気はミスを隠すことにもつながります。

検討会はあくまで、事故の再発を防ぎ、

「利用者を守ること」

が本来の目的であることを忘れてはいけません。


人を疑う前に仕組みを疑う

業務の仕組みに問題はなかったか?

ミスは職員個人の技術不足だけで起こるものではなく、業務の流れや情報共有など、仕組みに原因がある場合もあります。

・業務の流れに無理がなかったか?

・マニュアルは整備されていたか?

・欠員が出た場合のシステムはできているか?

などまずは仕組みを疑うことが大事だと感じます。

「そのミスは他の職員でも起きていたか?」

を考えると原因がシステムにあるか判断しやすいと思います。

仕組み作りは早急に

システムに問題があると判断したらすぐに改善することが大事です。

同じミスが今日、起こらないとは限りません。

具体的な対策の例として

・職員が極端に少ない時間帯があったので調整して手厚くする。

・マニュアルが古いものだったので更新する。

・お風呂のお湯が熱くなりすぎないように、温度設定は変更できないように設定しておく。

などが挙げられます。

マニュアルの変更など少し時間がかかりそうですが、変更した部分だけでも早く職員に周知することが大事です。

このように仕組みを見直すことは大切です。

しかし、それだけでなく一人ひとりが確認を怠らない姿勢も欠かせません。

個人の意識と仕組み、その両方があって初めて事故は減らせるのだと思います。


ミスにも種類がある

一生懸命取り組んだ結果のミス

ミスにも種類があり、その中には業務の流れの中でやむを得ないと思えるものも多くあります。

・急な欠員が出て、普段より忙しくなり、居室の整理整頓が抜けてしまった。

・夜間にコール対応が重なってしまい、入居者が転倒してしまった。

このようなことはだれが対応しても起こりえます。

そういったやむを得ない事態が起きた時は、他の職員や上司がフォローすることが大切です。

ミスをした本人は利用者に迷惑をかけたことは十分に理解しており反省しているものです。

フォローをし、改善策を一緒に考えることがその職員のためにも、利用者のためにもなります。

怠慢によるミス

やむを得ないミスがある一方で職員による怠慢によるミスも起こりえます。

・内服薬の服用前に声に出して内容確認をすることになっていたが、確認をせずに間違えて他の方に服用させてしまった。

・センサーマットを退室前に踏んで作動の確認をするところを、確認せず退室した。

その結果、入居者の動きに気づかずに転倒に至った。

これらのことは、本来すべきことをしていれば防げた事故です。

もちろん人手不足や急な欠員が出る場合もあります。

しかし、気の緩みや手抜きによるミスやそれに伴い引き起こされる事故に対しては、厳重な注意と指導が必要です。

この場合も職員を咎めることが目的ではありません。

あくまで利用者に安全に過ごしてもらうために、必要なことだと職員には理解してもらうことが大事です。


命に関わるミスは重く受け止める

介護士の仕事は、時に「命を預かる仕事」と言われます。

実際、ちょっとしたミスが利用者の命に関わることがあります。

入浴中の事故や送迎中の交通事故など、皆さんもニュースで見たことがあると思います。

こういった事故はどの介護事業所でも起こりえることです。

もし自分が利用者の命に関わるミスをしたら、計り知れないショックを受けることが想像できます。

しかし、一番苦しい思いをするのは他でもない利用者です。

そして、一番悲しむのはその家族です。

だからこそ、当事者である職員も事故を真摯に受け止め、自分の行動を振り返る姿勢が必要です。

ただ、その振り返りは「自分を責め続けること」ではなく、「二度と同じことを起こさないために何ができるか」を考えることにつながらなければ意味がありません。

そして、当事者の反省だけで終わらせるのではなく、組織としてミス・事故の再発防止を考えることで、本当の意味での改善と言えるのではないでしょうか。

命に関わる事故が起きた時は、職員だけではなく、管理者・看護師・医師など関係職種とも連携し、原因を多角的に検証することが重要です。


ミスは隠さない

 ミスは早く報告し被害を最小限にする

どんなミスでもまずは上司にすぐ報告しましょう。

早く報告することで被害を最小限にとどめることができます。

例として

・車椅子を押していた時に、居室の入り口に利用者の手がぶつかってしまった。

・外傷もなかったので報告しなかった。

・夜間に腫れが出て、翌日に病院受診に行くと指を骨折していた。

・普段から動きのある方で、ぶつけた後の動きでも悪化した可能性があるとのことであった。

このケースは本来はすぐに報告すべきでした。

そのことで、すぐに病院受診ができ、異常の早期発見につながり、症状は悪化しなかったかもしれません。

報告しやすい職場が事故を減らす

職場の雰囲気がミスの報告のしやすさを決めることがあります。

何かのニュースで見たことがありますが、ある企業の話です。

業務上のミスを報告した社員に対し

「報告してくれてありがとう」

と言うそうです。

もちろん、ミスに対しての感謝ではありません。

・ミスを早く報告してくれたおかげで改善することができる

・今後、同じようなミスをする人が減る

ということにつながるため

「ありがとう」

と言うのだそうです。

もちろん、すべてのミスに対して言うことを推奨しているのではありません。

先述した、「命に関わるミス」が起きた時にはそのような言葉はふさわしくないでしょう。

しかし、現場の空気感として

「報告しやすい雰囲気」

を作ることは大切です。

そのことが職員同士の信頼関係にもつながります。


すべては利用者のため

これまで挙げた、ミスをした時の考え方や報告を受けた側の在り方など、すべては利用者により良いケアを提供するために必要なことです。

事故報告書を書くことが目的ではありません。

検討会を開くことが目的でもありません。

職員を責めることが目的でもありません。

利用者が安心して生活できるようにすること。

同じミスや事故を二度と起こさないこと。

そのために私たちは改善を続けていく必要があります。


まとめ

ここまで、介護現場でミスについての考え方、心のあり方について解説してきました。

  • ミスは次に起こさないことが大切
  • 事故報告書は罰ではなく改善のため
  • 人だけではなく仕組みも見直す
  • 一生懸命なミスと怠慢によるミスは分けて考える
  • ミスは隠さず報告する
  • すべての改善は利用者へのより良いケアにつながる

ミスは誰でも起こす可能性があります。

大事なのは起きた事実を真摯に捉えて、組織で再発防止に努めることです。

ミスの一番の被害者はあくまで利用者であることを忘れずに緊張感を持って介護の仕事に取り組みましょう。

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