はじめに
介護職の方は、ほとんどの方が「アセスメント」という言葉を聞いたことがあるかと思います。
中には、実際にアセスメントを行ったことがある方もおられるでしょう。
一方で、
「アセスメントはケアマネが行うもの」
「介護職員には難しいもの」
このようなイメージを持っている方もいるのではないでしょうか。
実際、私自身も介護職としてアセスメントを行う機会があった際には、そのような印象を持っていました。
しかし、介護の現場で利用者と関わる中で、アセスメントは決して特別な職種だけが行う難しい作業ではないと感じるようになりました。
今回の記事では、アセスメントとは何なのか、そして介護職がアセスメントを行ううえで、どのようなことを大切にすればよいのかについて、私自身の経験を交えながら考えていきます。
アセスメントとは何か
まず、アセスメントの目的は、利用者にとって本当に必要な支援を明確にすることです。
そのために、身体機能や心理面、社会面、医療面だけでなく、これまでの生活歴や現在の生活環境など、さまざまな情報を集めていきます。
例えば、「歩くことが難しい」という身体面の情報だけを見ても、その人に必要な支援をすべて判断することはできません。
これまでどのような生活をしてきたのか、本人はどのような生活を望んでいるのか、どのような環境ならできることが増えるのか。
このように、さまざまな角度から利用者を知る必要があります。
そして、集めた情報をもとに、
「この人にはどのような支援が必要なのか」
「今できていることを、どうすれば続けてもらえるのか」
を考えていきます。
このように、利用者を一人の人として多角的に捉えることで、画一的な支援ではなく、その人に合わせた個別性の高い支援につなげることができます。
なぜ介護職にアセスメントが必要なのか
介護職がアセスメントを必要とする理由は、「自立支援」と「その人らしい生活を支えること」の二つが大きいと私は考えています。
介護サービスの利用が始まったからといって、利用者を事業所のルールや決められた支援方法に当てはめるだけではいけません。
利用者には、それまでの生活や習慣、価値観、できること、苦手なことなど、それぞれに違いがあります。
だからこそ、介護職は利用者を一人の個人として理解し、その人に合った支援を考える必要があります。
アセスメントを通じて利用者を知ることは、より適切な支援につながるだけではありません。
「自分のことを理解してくれている」という安心感にもつながり、利用者との信頼関係を築くうえでも大切です。
また、その人に合った支援を行うことで、生活意欲を引き出したり、残されている身体機能を維持・向上させたりすることにもつながります。
そして、介護職自身にとってもアセスメントは重要です。
「なぜこの人はこの行動をするのか」
「どうすれば、できることを続けてもらえるのか」
と考える習慣が身につくからです。
アセスメントは、単に利用者の情報を集める作業ではありません。
利用者を知り、考え、その人にとってより良い支援を考えるための大切な過程なのです。
情報を集めるだけではアセスメントではない
アセスメントにおいて重要なのは、利用者の情報を集めることだけではありません。
集めた情報をもとに、
「この利用者には、どのような支援が必要なのか?」
を考えることが大切です。
例えば、施設に入居した利用者の場合、次のようなことが考えられます。
- 入居する少し前までは、トイレで排泄できていた
→ まずは日中、1日1回からでもポータブルトイレでの排泄を試してみる。 - 物静かな性格で、あまり人と一緒に過ごすことを好まない
→ レクリエーションへの参加を強くすすめるのではなく、本人の様子を見ながら、一人で落ち着いて過ごせる環境をつくる。 - 入居前まで自宅で野菜を栽培していた
→ 施設での生活の中にも、園芸など本人が興味を持てる活動を取り入れられないか検討する。
このように、同じ「利用者の情報」であっても、そこから何を考え、どのような支援につなげるかによって、アセスメントの意味は大きく変わります。
そして、こうした支援の積み重ねが、利用者の「できること」を維持するだけでなく、これまでの生活習慣や楽しみを施設での生活にもつなげることになります。
つまり、アセスメントとは、利用者の情報を集めて記録することが目的ではありません。
「この人はどのような人なのか」
「何を大切にして生きてきたのか」
「今の生活で何ができるのか」
を知り、その人らしい生活を続けるために、私たちに何ができるのかを考えること。
そこまで考えて、初めてアセスメントが支援につながるのだと思います。
生活歴や本人の希望も重要
アセスメントを行ううえで重要なのは、本人の身体状況や病歴だけではありません。
これまでどのような生活を送ってきたのか、何を大切にしてきたのかといった「生活歴」を知ることも大切です。
生活歴を知ることは、その人自身を知ることにつながります。
例えば、長年仕事を続けてきた人と、家庭で家族を支えてきた人では、生活の中で大切にしてきたことも違うでしょう。
また、本人がこれから「どのような生活を送りたいのか」という希望を聞くことも重要です。
もちろん、特に施設では集団生活になるため、本人の希望をすべて実現できるわけではありません。
それでも、できるかできないかを最初から決めてしまうのではなく、まず本人の意向を聞き、その中で何ができるのかを考えることが大切なのではないでしょうか。
「この人はどのような人生を歩んできたのか」
「これからどのような生活を送りたいのか」
こうしたことを知ることで、介護職は目の前の利用者を単に「介護が必要な人」として見るのではなく、一人の生活者として捉えることができます。
そして、それがその人らしい生活を支えるためのアセスメントにつながっていくのだと思います。
アセスメントが自立支援につながる
適切なアセスメントは、「自立支援」にもつながります。
利用者の状態を見て、「何ができないのか」だけを考えるのではなく、
「どこまでなら自分でできるのか」
「どのような支援があればできるのか」
を考えることが大切です。
そこを明確にすることで、今できていることを維持したり、できることを増やしたりする可能性が生まれます。
例えば、次のような支援が考えられます。
- 脳梗塞によって左半身に麻痺が残っている
→ 右手は動かすことができるため、自助具を使用しながら自分で食事をしていただく。また、入浴時には右手で手の届く範囲を自分で洗っていただく。 - 認知症の影響で、難しい言葉を理解することが難しい
→ 「はい」「いいえ」で答えられるような簡単な質問をするなど、本人が理解しやすい方法でコミュニケーションをとる。 - 足が弱っているが、何かにつかまれば短距離を歩くことができる
→ 普段は車椅子を使用しながら、トイレ前の数メートルは手引き歩行で移動していただく。
このように、利用者の状態を細かく見ていくと、「すべて介助する」のではなく、「ここは自分でできる」という部分が見えてくることがあります。
もちろん、安全面への配慮は必要です。
しかし、安全を理由にすべて介助してしまえば、本人が持っている力を使う機会を奪ってしまう恐れもあります。
自分でできることが増えたり、今できていることを続けられたりすることは、利用者の自信や生活意欲にもつながります。
そして結果として、介助量が減り、介護職の負担軽減につながることもあります。
自立支援とは、単に「一人でできるようにする」ことではありません。
その人が持っている力を見つけ、それをできる限り活かせるように支援すること。
そのためにも、利用者をよく知り、「何ができるのか」「どのような支援があればできるのか」を考えるアセスメントが重要なのです。
アセスメントを一人で完結させない
アセスメントは、一人の職員だけで完結させるのではなく、複数の視点から利用者を見ていくことも大切です。
施設では、主にケアマネジャーがアセスメントを行いますが、自分が見た情報だけで判断するのではなく、現場の介護職や看護職、栄養士などから意見を聞くこともあります。
事業所の形態や役割によって違いはありますが、介護職がアセスメントに関わる場面もあるでしょう。
その際にも、一人で考えて終わりにするのではなく、他の職員や多職種から意見を聞いてみることが大切です。
例えば、ある介護職員には「いつも無口であまり話さない利用者」に見えていても、別の職員から「昔の仕事の話をするとよく話してくれる」といった情報が出てくることがあります。
また、看護職から身体面についての意見をもらったり、栄養士から食事に関する情報を得たりすることで、一人では気づかなかった課題や、その人に合った支援方法が見えてくることもあります。
このように、複数の職員がそれぞれの立場から利用者を見ることで、より多くの情報を集めるだけでなく、利用者の思わぬ一面や新たな可能性に気づくことができます。
アセスメントは、一人で完成させるものではなく、みんなで利用者を知り、みんなで支援を考えていくものでもあるのではないでしょうか。
複数の視点を取り入れることが、アセスメントの精度を高め、よりその人に合った支援につながっていくのだと思います。
私が考える介護職のアセスメント
「アセスメントは難しいもの」
このようなイメージを持っている介護職の方も少なくないでしょう。
しかし、私はアセスメントをそれほど難しく考える必要はないと思っています。
日常生活に置き換えて考えてみると、分かりやすいかもしれません。
例えば、
- 子どもが歩きにくそうにしている
→ 成長して靴のサイズが合わなくなっているのではないか? - 飼っている猫の餌を食べる量が減ってきた
→ 餌に飽きたのか、それとも何か体調に変化があるのではないか? - お気に入りのズボンが入らなくなってきた
→ 少し運動するようにしよう。
このように、私たちは普段の生活の中でも、何かの変化に気づくと「なぜだろう?」と考え、その原因を予測し、どうすればよいのかを考えています。
実は、これもアセスメントを考えるうえで分かりやすい例だと私は思っています。
私たちは、自分自身が快適に生活するために、日々の変化に気づき、原因を考え、必要に応じて生活環境や行動を変えています。
一方で、介護サービスを利用する高齢者の中には、身体機能や認知機能の低下などによって、自分だけでは状況を整理したり、必要な支援を考えたりすることが難しい方もいます。
だからこそ、介護職が本人の様子や生活を見ながら、一緒に考えていく必要があります。
「いつもと何か違う」
「これは以前はできていた」
「どうすれば、この人がもう一度できるようになるだろう」
こうした小さな気づきから考え始めることも、介護職にとって大切なアセスメントなのではないでしょうか。
アセスメントは、特別な人だけが行う難しい作業ではありません。
利用者をよく見て、変化に気づき、「この人にとって何が必要なのか」を考えること。
それが、介護職のアセスメントの第一歩なのだと思います。
まとめ
ここまで、介護職にとってアセスメントがなぜ大切なのかについて考えてきました。
アセスメントは、自立支援やその人らしい生活を支えるために欠かせないものです。
今回のポイントをまとめると、以下のとおりです。
- アセスメントは、自立支援やその人らしい生活を支えるために必要
- 集めた情報を、適切な支援につなげることに意味がある
- 生活歴や本人の希望を知ることも大切
- 自立支援のためにもアセスメントは重要
- アセスメントは、介護職だけでなく多職種の意見も取り入れながら考えていくことが大切
- アセスメントは、特別な職種だけが行う難しい仕事ではない
利用者との関わりの中で、一つひとつの小さな気づきを積み重ね、支援につなげていく。
その積み重ねが、利用者の生活意欲や自立につながり、毎日の生活の満足度を高めることにもつながっていくのではないでしょうか。
難しく考えすぎず、まずは目の前の利用者をよく見ること。
そこから始めることが、介護職にとってのアセスメントなのだと思います。
今日の介護から、「この人には何ができるだろう?」という視点を一つ持って、利用者と関わってみてください。
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