入居者が本当に望むこととは?|生活歴から考える利用者主体の介護

介護の本質

はじめに

前回の記事では、

「もし私が介護施設に入居したら」

というテーマで、一人の入居者として望む生活を書きました。

しかし、それはあくまで私の考えです。

入居者によって価値観や希望する生活は違います。

介護で本当に大切なのは、私たちが「こうした方がいい」と決めることではなく、その人が何を望んでいるのかを知ろうとすることです。

今回は「入居者が本当に望むこと」について考えていきます。


入居者によって望む生活は違う

レクリエーションを楽しみにする人もいれば、一人の時間を望む人もいる

入居者の余暇の時間の過ごし方は人それぞれです。

私自身は前回の記事で、一人の時間を持ちたいということを書きました。

しかし、当然、他者と多く触れ合うことが好きな人もいます。

集団のレクリエーションに積極的に参加する人もいれば、一人で本を読んだりテレビを見るのが好きな人もいます。

ご家族から「他者と触れ合ってほしい。」と希望が出ることもあります。

しかし一番大事なのは本人がどう過ごしたいかということです。

レクリエーションに参加しないからといって、その人が不満を感じているとは限りません。

一人の時間を大切にすることが、その人らしい生活につながる場合もあります。

介護職は「参加してもらうこと」を目的にするのではなく、その人が心地よく過ごせる時間は何かを考えることが大切ではないでしょうか。

趣味を続けたい人もいる

施設に入ってからも昔からの趣味を続ける方もおられます。

居室でも出来る、読書や手芸などは続けられる方も多くおられます。

また、施設によっては庭園や畑があり、園芸が出来る環境を備えていることもあります。

一方で、身体の機能低下や施設環境が原因でこれまでの趣味を諦める方も多くおられます。

趣味は施設生活を送る上での生きがいの一つです。

趣味をお持ちの方には継続出来る環境を作る。

趣味が続けられなくなった方には、何か別のことができないかを一緒に探していく。

何が好きだったのかを知ることが、その人らしい生活を支える第一歩になるのではないでしょうか。

入居者の生きがい作りも我々介護士の大事な仕事だと思います。


正解は一つではない

食事をたくさん食べたい人もいれば、少食の人もいる

食事は入居者の体作りや健康維持のために大事なことです。

そして、入居者の楽しみでもあります。

多くの施設では栄養士が考えたバランスの良い食事が提供されます。

しかし、必要な食事量と本人が食べたい量が必ず一致するとは限りません。

多くの方は高齢になるにつれて食が細くなりますが、たくさん量を召し上がる方もおられます。

健康状態にはもちろん気をつけなければいけません。

本人の希望だけで判断してしまうと、食事の量を増やした場合は、糖尿病や高血圧のある方は悪化する恐れもあります。

しかし、食事を楽しみにされている方にとっては、食生活の満足度はそのまま施設生活の満足度につながります。

まずは入居者の持病を把握することが大切です。

その上で、本人が食事に何を求めているのかを知る必要があります。

「健康のためだから」と一方的に制限するだけではなく、時には本人の思いを聞きながら、どこまで希望を取り入れられるのかを一緒に考えることも大切です。

「たくさん食べたい」「もう少し量を減らしてほしい」「好きな物を時々食べたい」

このような思いは利用者によって異なります。

だからこそ、食事量や食事内容も『その人らしい生活』という視点で考えていきたいものです。

職員は敬語が安心な人もいれば、親しみやすい言葉を望む人もいる

前回の記事で私は、職員の言葉使いについて、初めは敬語で話してほしいことを書きました。

入居者によっても本人が望む話し方は人それぞれです。

敬語で話された方が安心される方、職員を孫のように思っており距離感の近い話し方の方が好まれる方、少しずつ人との距離を縮めていきたい方などいろんな方がおられます。

本人がどのようなコミュニケーションの取り方を求めているかは、会話している時の表情や言葉選びにも注意をはらうことが大事だと感じます。

「入居者が安心して職員と会話することができる。」

このことが職員と入居者との信頼関係の構築につながると思います。

施設のルールに合わせる方が安心な人もいる

施設に入る方は、出来るだけ自分の好きなように生活したいものです。

しかし、時には施設側のルールを守る方が安心な方もおられます。

長年、厳しいルールの中で生活されていた方や、心が疲れている方はその傾向にあります。

しかし、ルールに従ってくれているから何も不満がないとは限りません。

そのルールが入居者に負担になりすぎていないか、苦痛を感じていないかなど、本人とのコミュニケーションの中で感じることが大事です。


生活歴を知ることが介護につながる

施設に入った後に、どんな生活を望まれるか?

普段のコミュニケーションから感じとることも大事ですが、本人の生活歴を知ることも大事なことです。

生活歴はただの情報ではありません。

・どんな仕事についていたか?

・家族構成

・どこで生まれ育ったか?

・人生にどのような転換期があったのか?

・一日のルーティンは?

その人らしい施設生活を送るためのヒントが生活歴の中にはたくさんあります。

生活歴を知ることで、「なぜその人がそのような希望を持つのか」が見えてきます。


希望は変わることもある

本人の希望は施設生活の中で変わっていくことがあります。

「食事を食べられる量が減ってきたので、減らしてほしい」

「レク活動は苦手だったが、気の合う入居者ができて一緒に参加するのが楽しみになった。」

「人と関わるのが億劫になってきたので、一人で過ごす時間を増やしたい」

というように、利用者は状態も気持ちも変わります。

だから

「一度希望を聞いたら終わり」

ではありません。

定期的に

「今はどう思っていますか?」

と確認することが大切です。


利用者主体とは何か

利用者主体とは

希望を全て叶えることではありません。

施設ではできないこともあります。

しかし

希望を知ろうとする姿勢

これこそが利用者主体だと思います。

その姿勢があれば入居者も

「ここの職員はちゃんと希望を聞いてくれる」

と安心して施設生活を送ることができ、信頼にもつながると思います。


まとめ

今回は施設入居者が本当に望むことについて書いてきました。

  • 入居者によって望む生活は違う
  • 生活歴を知ることが大切
  • 今の思いも確認する
  • 希望は変わることもある
  • 利用者主体とは、希望を知ろうとすること

入居者の希望を把握するには知ろうとする姿勢が大切です。

多角的に入居者をみて、コミュニケーションを図りながら、本当の望みを引き出すことを心がけましょう。

入居者一人ひとりに、それぞれ違う人生があります。だからこそ、その人を知ろうとする姿勢を忘れずに介護に向き合っていきたいものです。

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